2013年11月01日

15年前の「7つの習慣」に驚く

家にあるビジネス書で、買ってから10年以上経ったものでもう古いなと思われるものを処分することにした。最近買った本の置き場所がなくなってしまったからである。その時見つけたのが、1998年(初版36刷)の、
スティーブン・R・コーヴィー著「7つの習慣」(成功には原則があった!):キング・ベアー出版
である。
記憶では、会社で受講した7つの習慣の2日間の研修で配られたものだ。一緒にバインダ―式の手帳のようなものも貰った記憶がある。
研修の内容で覚えているのは、若い女性とお婆さんの絵と、大きな石ころと砂を容器に詰め込むときには、大きな石ころを先に入れ、後から砂を注ぐとよい、といった話だけで、後は何も残っていない。
この本も読んだ形跡が見られない。最初の方の若い女性とお婆さんの絵を除けば、どのエピソードも記憶にない。石ころの話は出てこなかったので、講義の中だけなのかもしれない。
そんなわけで、初めてのつもりで読み進めることができた。ところが、読んだ覚えはないのに、書かれていることは、常日頃私が考えていることと殆ど同じ(ちょっと言い過ぎ?)なのである。
主体性を発揮する(第1の習慣)は、例えば楠木建さんのパクリではあるが「生き残りのためグローバル化せざるを得ない」というようなアウトサイドインの考え方を改めて、自分で「こうしよう」という意志を持つインサイドアウトの考え方をせよ、ということである。
目的を持って始める(第2の習慣)は、志の高い技術者になろう、という私の事務所のモットーにつながるものである。
重要事項を優先する(第3の習慣)だって、「私はいつも優先順位を考えて行動してきた」と先日もあるミーティングで話してきたばかりである。
以降の、第4の習慣(Win-Winを考える)、第5の習慣(理解してから理解される)、第6の習慣(相乗効果を発揮する)、第7の習慣(刃を研ぐ)のいずれも、私がコンサルタントの研修の中で教えてきたことと同じ内容である。(ようにしか見えない)
実は、私は「7つの習慣」の研修で得たことをしっかり身に着けて実践してきたのか?実は、本書をきちんと読み込んで、自分のものにしていたのか?どちらもありえない。貰った手帳は一行も書かないうちに紛失してしまったし、本書はきれいなままである。

一つ考えられることがある。「7つの習慣」が日本にもたらされて17年になる。今でも書店に本書が並んでいる。それを身に着けた人が色々なところで研修したり、講演したり、引用しているうちに、例えばWin-Winのように一般的な概念になってしまったのかもしれない。
だとすれば、これは相当な影響力を持った本なのではないか。

先日、明け方に変な夢を見て飛び起きた。誰かが「お前が偉そうにブログに書いたりしゃべったりしていることは、全部『7つの習慣』のパクリじゃないか。もっとオリジナリティのあることをしゃべらないと馬鹿にされるぞ。」と言っている夢だった。「でも、私だけじゃなくて、他の人たちが話したり書いたりしている「いいこと」はかなり「7つの習慣」とかぶっているぞ。」と必死の抵抗をする私がいた。
posted by 石田厚子 at 14:41| Comment(0) | 本を読む

2013年10月24日

「人を動かす新たな3原則」で力を得た

私は、一般には、大企業で定年まで勤め上げた人、と見られている。しかし、実は、28歳から42歳までの14年間は、非正規雇用、自営業(フリーター?)などで数か所の職場、仕事を転々としていた。その間2人の子供を産んだが、一度も産休、育休は取ったことがない。(そのような環境にはなかった)この時期を、「孤独なキャリア形成の時期」と呼んでいる。
この間、必死で技術力向上のための努力をし、自分を売り込んできた。この時期がなければその後、大企業でITコンサルタント、企画部長、コンサルタントの育成など勤めあげることはできなかったと思う。そして、この時期こそが、自分が技術者からセールス・パーソンに生まれ変われたときだと思う。

ダニエル・ピンク著「人を動かす新たな3原則」(売らないセールスで、誰もが成功する):講談社
は、セールスという言葉にひっかかって購入したように思う。読み始めてすぐにはまってしまった。

最初に、「現代人は誰でもセールスに関わっている」という章が設けられているが、私にとってはもう30年以上前に気づいていたことである。だから、早く先に行きたい、とページをめくり続けた。

中心にあるのが、セールスに必要な特質:同調、浮揚力、明確性、そして、セールスに必要なスキル:ピッチ、インプロ、奉仕、についての記述である。これらは、各々の読み手が自分の関心事や経験に応じて捉え方は異なるかもしれないが、取り入れることができると思う。事例は分かりやすい。

私が感銘を受けたのが次の点である。
8年前、「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」という論文で工学博士の学位を得た。その論文で主張したことは、商品(製品やサービス)の提供者は、顧客に対して商品の良い点も悪い点も含めた情報提供をすることにより、最終的には高い顧客満足につながり、継続して顧客であり続ける可能性ができる、ということである。それを、学生を使った実験の結果を分析して示した。
このときは、インターネットは一般消費者に今ほど普及しておらず、SNSもなかったので、情報は企業から提供しない限り(特に先端的な商品は)ユーザには伝わらなかった。現代は、ユーザ自身が情報を収集し、商品提供企業と同等の知識を持って購入意思決定をすることができる。本書では、それを、
「買い主は気をつけよ」から「売り主は気をつけよ」へ
として論じている。
私が8年以上前に主張していたことは間違いなかったと、心の中で密かに拍手を送ったのである。
posted by 石田厚子 at 15:01| Comment(0) | 本を読む

2013年10月22日

「USERS」でユーザーとは何か考えてみた

偶然とはいえ、「MAKERS」という本と一緒に買ったのが「USERS」で、思わず笑ってしまった。家に帰って初めて気づいたのもおかしい。

アーロン・シャピロ著「USERS」(顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略」:翔泳社 である。サブタイトルが物々しいのに加えて、ご丁寧にも、USERSの文字の上にNOT CUSTOMERSと書いてある。
ここで、はたと気づいた。「顧客」は通常Customerである。「消費者」はConsumerである。ではUserとは一体何だったっけ。

本書では、ユーザーを、顧客、従業員、求職者、見込み客、パートナー、ブランドのファン、メディアのメンバー、その他影響力を持った人々、と定義している。デジタル・メデイアとテクノロジーを通して企業と交流する人々とのことである。
これは、インターネットを介したデジタル社会を前提とした、顧客を含む広い概念なのだ。そして、これらの多くの人々を満足させなければ、これからの企業は成り立たない、という警告を発しているのだ。

たまたま、並行してマッキンゼーのサイトで、"How retailers can keep up with consumers" という、今月のレポートを読んでいた。これが、内容的にとても近いもので、どちらに書かれていたことだったっけ、と考えてしまうほど似ている。要するに、デジタル世界に対応したビジネスに変えていかなければ生き延びられない、やるなら今でしょ、というものなのである。

本書は2011年に書かれたものであるが、監訳者(萩原雅之氏)が「当時ホットな話題になったブランドやサービスが中心だが古さは全く感じさせない。」と言われているが、マッキンゼーのレポートを読んで納得した。

最も考えさせられた部分は、「なぜ多くの似たような製品が、同時にローンチされるのか?」というところである。多くの人たちが同じようなアイディアを持っていて、技術的に実現可能になったとたんに製品として世に出すからだ。そして、早すぎても、遅すぎてもいけない。では、どの中で抜きんでるのは誰か。
本書では、最も可能性の高いのは「一番初めに素晴らしいユーザー体験を提供した商品」を出すこと、と言っている。
多分、それも一瞬のことだろう。時の流れとともに技術も進歩し、新しいアイディアが製品化され、新しい体験にユーザーは飛びついて行く。ユーザー中心主義は、常に走り続けなければならないということか。
posted by 石田厚子 at 18:34| Comment(0) | 本を読む