2013年09月25日

「発明家に学ぶ発想戦略」に唇を噛む

十数年前から1年ほど前まで、ロシア発の発明技法TRIZをビジネスのイノベーションに適用できないか、研究していた。仕事とは関係ないので、自腹を切って海外の学会にもよく出かけた。途中で熱が冷めたりした時期もあるが、よくまあ続いたものだ。
確かに、技術的な発明の原理やパターンは新たなビジネスモデルの創出にも適用できることは確認できたのだが、それがビジネスのイノベーションになるか、というと疑問だった。
要するに、解決すべき問題がはっきりしていれば、解決策はTRIZで導けるのだが、その問題自体が見いだせないのである。目に見えた問題を解決してもイノベーションにはならない。世の中の誰も気づいていない問題を見つけ出して解決すれば、それはイノベーションになる。
世の中にある発想法、発明技法は、解決策の見つけ方にフォーカスしていて、問題の見つけ方については曖昧なままなのである。
そんなわけで、1年ほど前からTRIZとはおさらばしてしまっている。

そして見つけたのが、エヴァン・I・シュワルツ著「発明家に学ぶ発想戦略」(イノベーションを導くひらめきとブレークスルー):翔泳社 である。
本書は、TRIZのような発明のプロセスのパターン化を狙ったものではなく、多くの発明家にインタビューし、その活動の場に行き、彼らの発想のパターンを述べたものである。

やはりあった。「発明家というと問題の解決がうまい人と思われがちだが、それよりも問題の発見が得意な人と考えた方がよい」という記述が。問題の本質を読み取れずにテクノロジーの面からとらえがちであることにも警告を発している。
では、問題の本質をどう掴むのか、については、プロセスなりロジックが示されているわけではない。しかし、多くの発明家の事例を読んでいくと何となく掴めてくるような気がする。何度か読み返しが必要かもしれない。

私が一番心を打たれたのは、「システムとして考える」という章である。
ここでは例として、白熱電球の発明が挙げられている。すなわち、エジソンよりも何か月も前に白熱電灯の実演をしたジョゼフ・スワンよりも、トーマス・エジソンが後世に名を残した理由は、エジソンがシステムの見地から発明を考えたからだという。
エジソンは人々に明かりを届ける手段としてのシステム全体の開発を視野にいれていたため、白熱電球を既存のシステム(ガス灯)に組み込もうとしなかった。スワンは、ガス灯システムとの争いに敗れた。ということだそうである。

システムとして考えることは、問題の本質を掴むこととかなり似ている。というか、同じに思える。視野を広げ、既存の枠組みに囚われない発想が必要ということである。
何だか、十数年も問題解決パターンにこだわっていたことが無駄だった(?)ような。

よく、鳥の目で全体像を広くとらえ、虫の目で詳細をよく見るべし、ということを言う。当たり前だと思っていたが、ちょっと疑わしく思えてきた。
先日、鳥にカメラを付け、空を飛ぶとき何を見ているかを撮影した映像を見た。とても気持ちよさそうに飛んでいるのだが、全然全体像など見ていない。結構、心の赴くままいい加減に飛んで、いい加減に見ている。
意識してものを見る習慣を付けないと、鳥の目を持っていても全体像は掴めないのだ。
posted by 石田厚子 at 16:31| Comment(0) | 本を読む
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