2014年01月03日

「なぜ危機に気づけなかったのか」で問題発見力醸成について考える

大学のプロジェクト型の教育カリキュラムを調べてみたところ、短期間で結果を出させるためか、提供された問題をチームで解決に導く、というものだった。ケースを使った研修も、自分で問題を発見させるというより、問題は(後付けで)見えていて、それをどう解決したかが主眼になってしまう。問題発見からの研修だと、様々な問題の解決策をそろえる必要があり、準備も大変である。だから、とりあえず、一番可能性のありそうな問題から出発することになってしまう。でも、今本当に必要なのは、正しく問題を発見することなのである。なぜなら、問題さえ明確になっていれば、世界中の人の知恵を借りて解決することが可能だからである。

マイケル・A・ロベルト著「なぜ危機に気づけなかったのか」(組織を救うリーダーの問題発見力):英治出版 は、そのような問題意識から読むことにした。

本書はそもそも、リーダーが読むべき本という位置づけだと思う。私のような読み方は特殊かもしれない。ここで書かれている「優れた問題の発見者になるためにリーダーが身につけるべき七つのスキル」は、
@ 情報のフィルターを避ける
A 人類学者のように観察する
B パターンを探し、見分ける
C バラバラの点を線でつなぐ
D 価値ある失敗を奨励する
E 話し方と聴き方を訓練する
F 行動を振り返り、反省のプロになる
である。いずれも、特別変わった内容ではなく、色々なところで語られているものだと思う。
ただ、私は、自分の問題意識から次の点に注目した。

率直で効果的な話し方
・聞き手のことを知る
・これまでのいきさつを理解する
・支持者を探し同盟を組む
・腹心やゲートキーパーを通じて働きかける
・まず考え方を変えさせることに焦点を絞る
・解決の選択肢を提示する

聴き方についての指南はかなり多く見受けられるが、効果的な話し方については(プレゼンテーション・スキル以外は)あまりお目にかかれない。これは学ぶべきだと思う。

さらに、問題発見には「知的好奇心」が必要だということ。疑問を持てばインターネットの力を借りれば知識は得られる。そもそも関心を抱かなければ何も始まらない。
年を取ると好奇心が失われるという。知的好奇心を持ち続けることは、リスクマネジメントにも重要である。
posted by 石田厚子 at 14:00| Comment(0) | 本を読む