2013年09月11日

「価値づくり経営の論理」で10年前を懐かしむ

涼しくなって、早朝の犬の散歩も実に快適。ただ、5時前に家を出るのでそろそろ懐中電灯が必要かな。

本日の本は、延岡健太郎著「価値づくり経営の論理」(日本製造業の生きる道):日本経済新聞出版社
著者の名前と、「価値づくり」という言葉に惹かれて購入。1日で読めた。

延岡教授とは、10年以上前にけいはんな(京都、大阪、奈良にまたがる研究都市)で行われたMOT(Management of technology)の1週間コースで講師と生徒として出会っている。年齢は私より10歳ほど下。当時は神戸大学におられたはずである。
そのMOT研修は、企業の研究所長、研究部長を集めた合宿で、米国から来られたMITの教授陣、トヨタなど日本のものづくり研究で有名な藤本隆弘教授(東大)らが講師として名を連ねていた。参加者は関西、関東の名だたる製造業から集まった20名ほど。そこに最年長の50代前半の生徒として私も参加していた。

この研修で今でも覚えているのが、'Value Creation(価値創造)'と'Value Capturing(価値獲得)'の違いについての講義である。MITの女性の教授が、「日本はValue Creationで止まっている。Value Capturing'まで追求しなければ世界では勝てない」と言われたのに対して、生徒である我々は意味が理解できず、数人で講師に質問に行った。当時、企業の研究者、開発者にとっては、価値を創造することが目標であって、その先何を獲得すべきなのかが理解できなかったのである。
その時の回答は、「価値を作るだけでは足りない。それを市場に出して、そこから対価を獲得するまで考えるべきである。」と言うものだった。意味は分かったが、腹落ちしていたとは言えない。

それから数年して、私は子会社に移り、米国人の社長と出会うことになる。最初の全社ミーティングで言われた言葉は、'Make Money!'だった。その時、'Value Capturing'を本当に理解できたように思う。

本の話に戻る。
この本の最初の部分で、'Value Creation(価値創造)'と'Value Capturing(価値獲得)'が出てくる。しかも、いずれも'Value'が出てきてわかりづらいので、この本では、「ものづくり」と「価値づくり」として論じている。まるで自分のことを言われたようで懐かしいような、恥ずかしいような。
しかし、'Value Capturing'を「価値づくり」と言われたとたん、研修で感じたえげつなさ、社長から'Make Money!'と言われた時の頬をひっぱたかれたようなショックが薄れ、何だかお行儀よくなってしまったような気がした。

本書では、日本の製造業が「ものづくり重視」から「価値づくり重視」へと転換していくべきだとする一方で、「価値づくり」を追求するとともに、「ものづくり」も追求し続け、決して手放してはならない、と主張している。
また、「価値」を「機能的価値」と「意味的価値」に分類し、最終的に、意味的価値を追求することを提言している。
そして、出てくる言葉が「深層の価値創造を目指す」というもの。何だか、またU理論のプレゼンシングの世界に踏み込んだのか(?)と思わせるが、こちらは「何かが下りてくる」的なものは全くなく、企業の底力(組織能力、積み重ね技術)によって顕在化していない顧客が喜ぶ価値(潜在ニーズ、意味的価値)を創り出そう、という至ってまともなものである。

価値づくりに成功している企業として、定番のアップル、日本企業としてのキーエンス、シャープなどを挙げているが、過去の事例を分析する手法だとやはりこういう例になるのかな。
ただ、シャープの現状などを考えると、過去の事例から学ぶことの限界を感じてしまう。

かといって、「何かが下りてくる」的なU理論には抵抗があるし・・・まだまだ悩まなければ。
posted by 石田厚子 at 10:11| Comment(0) | 本を読む